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大きな魚を手軽に釣ろう

ミミズ箱5.1号β

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大型ミミズの亜成体から成体への成長を実現する

このミミズ箱​5.1号βは、ミミズ箱5号βと全く同じ箱で、まったく同じ個所に通気孔と通水穴を施してある。

 

2018年までのフトミミズ飼育実験において、水を循環させるフロースルー型容器でヒトツモンミミズっぽいミミズに続いて大型のノラクラミミズっぽいミミズの飼育も数か月間にわたって可能であることが示されてきた。

 

同時に行ってきたフトミミズ床土の園芸利用の実験によって、上記の実験において主に使用してきたトイレットペーパーと腐葉土をミキシングしたミミズ床土「NPS2.0-F」は、植物もろくに育たないほどの不毛の床土であることもわかってきた。

 

フトミミズ園芸実験2018 へ

 

これまでの実験からも、一定の成果は認められる。しかしその「実験」を通して何度も確認してきたことであるが、そもそもフトミミズは、シマミミズのように年がら年中繁殖して増えるものではない。そして経験と文献から、フトミミズには種によって多年性のものと単年性のものが存在していることがわかっている。年がら年中繁殖しているシマミミズとは勝手が違う。

 

これまでの実験では、偶然、「もう1年生きる」状態のものを捕獲してきて、冬を越したと喜んでいた・もしくは、「もう寿命が尽きそう」な状態のものを捕まえてきて、「すぐに力尽きる」と嘆いていたという可能性もあるということだ。そういうことを見据えて、実験計画を見直さなければならないのである。世の中は単純にはできていないものだ。ミミズに関する勉強は長い目で見ていかなければならない。

 

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目次

 

並行して行った園芸実験で明らかになったこと

 

冒頭で述べた実験結果を考慮に入れると、植物の育成に関しては「NPS2.0-F(成分・製法はミミズ箱1号α参照)」は明らかに栄養不足だと言える。この事は、ミミズにとってもかなり過酷なのではないかと推測できる。

 

なぜなら、ニワトリかタマゴかはさておき、野生のミミズが植物の存在しない土から採れることはないからだ。粉砕した腐葉土と混ぜているとはいえ、基材がトイレットペーパーではやはり豊かな土壌たりえないのである。

 

植物も育ちうる新しいミミズ床土を考案する

 

植物の育ちそうなもので、かつ、「NPS2.0-F」のように保水性を持ち、通水しても団粒構造を維持して水はけがよく、ミミズのエサになり・・・

 

実現できれば、ミミズにとっても都合が良い可能性が高いが、これはなかなか厳しい。根本的に考え方を改めての床土の考案が必要だ。私は長い冬の間に考えをめぐらせ、土だけを作る実験を幾度となく行った。その結果、以下のような配合の土を考案した。

 

腐葉土 10リットル(水約10リットルを加えて混合し、ミキサーをかける)
②ケト土 4リットルを加えてダマがなくなるまで溶かす
③鹿沼土 5リットル、川砂  2 リットルを加えて良くかき混ぜる

 

バケツで混ぜた後に新聞紙の上に広げて水切りをし、土全体がほろほろと崩れるくらいになったところで袋に入れて保管する。

 

この土をFK3.0と命名する。一応、この配合にした根拠を述べておこう。

・ケト土は水生植物の腐植であるため、ミミズが食べる可能性がある

・川砂はケト土の粘土質を適度にほぐしてくれる役割を担っている

・鹿沼土は床土全体に通気性を付与するためにいれてある

・全体に程よくエサとなる腐葉土を分散させたかったので粉砕している

 

 

植物が育つかどうかはこのミミズ飼育実験と並行して行うフトミミズ園芸実験2019で確認する。

 

フトミミズ園芸実験2019へ

 

春先に採集される亜成体ミミズの育成を行う

さて、この箱で最初に行うのは、冠帯の出ていない亜成体→成体への育成実験である。何故かというと、亜成体であれば飼育方法は今まで通りでもうまくいく可能性が高いからである。他にやらなければならない実験は、

・成体→卵胞

・卵胞→幼体

・幼体→亜成体

とたくさんあるが、もっとも簡単であると考えられる部分から始めているというわけだ。

 

 2019/04/06、6匹の亜成体を投入

 

ミミズ箱5.1号βにFK3.0を箱の容積の3/4ほど入れ、冠帯が未完成な亜成体ノラクラミミズっぽいミミズを6匹、投入した。

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1か月を目途にミミズ捜索を行う。なお、週に2リットル、カルキ抜きを済ませた水を容器のふたを開けて入れることにする。この水は土に染み込み、箱に設けられた排水穴から排出される。

 

2019/05/04 4週間ミミズ捜索

今回ミミズ箱をひっくり返した結果、亜成体のノラクラミミズっぽいミミズ6匹は全て投入時より巨大化して発見された。うち冠帯のうっすら出ていた2匹からは、ほぼ完全な冠帯が観察できた。

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これまでの紙ベースで作った床土とはあきらかに活きが違うようにも感じる。冠帯の全く出ていなかったミミズからも冠帯が観察できればこの実験は成功だと言える。今後が楽しみである。

 

2019/05/25 水が排出されないトラブル

 

この日カルキ抜きを行った水2リットルを一気に入れておいたら、5時間たっても水が排出されておらず、すべてのミミズが表面に出てきていた。溶存酸素さえ足りていればミミズは水中でも生きられるようなので今回は助かったが、問題は土である。とりあえず水は箱を傾けて排出した。

 

おそらく、ミミズがエサとして土を食べて糞をする際に、粘土質の部分が分離されて濃縮されるのだろうと推測しているが、この粘土質の部分が容器底にびっしり詰まってしまっていたことで今回のような事態が起きたのだろう。対策を練っておく必要がある。

 

2019/06/01 2か月経過のミミズ捜索

 

箱には6匹のミミズがいるはずである。まぁ5/25のトラブルの時6匹生きているのを確認していたので心配はしていなかったが、すべて著しく大きくなって、冠帯も完成した状態で無事発見された。

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これにより3月から4月の春先に採集されるノラクラミミズっぽいミミズの(おそらく「1年もの」とみられる)亜成体は、2か月ほどで生体に成長することを証明したと言えるだろう。また、この飼育床土がミミズの餌や住処としてじゅうぶんな働きをしたことも確実である。

 

このミミズと同じ種とみられる成体のミミズが3月から4月頃にも採集されることから、おそらくそのミミズたちは「2年もの」なのだと推測される。このため、現在飼育しているミミズたちの寿命は最短でも来春であろうと考えることができる。

 

ということは、その来春までのどこか、或いはそれ以降の寿命までのある時点で繁殖行動をするはずなのである。ミミズ箱5.1号βでは、この卵胞および子ミミズの発見にチャレンジしていくつもりである。

 

2019/06/29 3か月経過のミミズ捜索

箱から土がごっそり出てこないので苦戦させられたが、無事6匹のいつものミミズを確認することができた。

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そろそろ考え始めないといけないとは思っていたが、このままの飼育ではミミズのエサが枯渇するのではないかという問題がある。 紙ベースの土を使用していた時の様に、腐葉土を粉砕して水と一緒に与える方法、単に捜索時に土を換えてやる方法とがあると思うが、ミミズが卵胞を残している可能性があるのでできる限り前者の方法で餌を供給していきたいと思っている。

 

2019/07/27 4か月経過のミミズ捜索

ミミズ飼育も佳境の夏に入った。夏にはよくミミズを落としてしまうが、今回の捜索ではバッチリ全6匹のミミズが元気に出てきてくれた。4月から全くミミズを落としていないのは快挙と言ってもいいだろう。

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正直言ってこの飼い方で問題になるのは温度だけなのではないかと思う。それも手は打ってあるが、今のところ秘密である。

 

手間がかかる部分というと、2回から3回水を通すと飼育床土が粘土状になってしまい水がはけなくなることだ。今の所は、月1回の捜索時に土をすべてほぐすようにしているが、3回4回目の通水の時には水を何回かに分けて入れるという少々面倒なことになっている。砂や鹿沼土の割合を見直すと良いかもしれない。

 

2019/08/24 5か月経過のミミズ捜索

ついに「春につかまえたミミズが全て夏を越す」という快挙が達成できそうだ。今秘密にしてある暑さ対策も効果が抜群のようすだ。

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今回の捜索で、1匹のミミズに尾の自切をさせてしまった。これが原因でミミズが落ちたり腐ったりして悪影響しなければいいが、少し心配である。紙ベースの床土の時は卵胞が落ちていたらすぐわかったものだが、いまの「FK3.0」では発見は容易ではない。ともあれ、今年のこの実験は「亜成体→成体」がメインの実験だったのですでに成功しており、今はその副産物を得ようという段階だ。力を抜いてやろうと思う。

 

20109/21 6か月経過のミミズ捜索

快挙である。春につかまえたミミズが全て夏を越した。6匹すべて元気な姿で見つかった。先月に自切させてしまった個体もも元気であった。

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この箱では今後、このミミズの寿命であると予想される来春以降のその時まで飼育することが目的となる。同時に、その寿命までの間に卵胞や子ミミズを発見できれば尚良い。また、この飼育が長期になりそうなのでミミズ箱4号もβ型に改造して別の実験にうつろうと思っている。気長に見ていっていただきたい。

 

2019/10/27 7か月経過のミミズ捜索

気温も下がり、安定したミミズ飼育ができる季節になった。これで丸1年飼育というこれまでに私が達成できなかった記録も近づくかもしれない。

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FK3.0は驚くべき床土だ。もはやこれなしに私はミミズ飼育を語れない。狙いが全て当たると逆に不安すら覚える。恐る恐るミミズ捜索をしなくてもよくなった。これは快挙だ。

 

2020/04/18 1年経過のミミズ捜索

 

ずいぶん放置してしまったが、ミミズが生きていることはわかっていたので捜索を行っていなかっただけでミミズ飼育の世話自体は続けていた。この箱の場合、夏場は週にカルキ抜きした水を2L程度通水、1か月に1回程度腐葉土をミキサーにかけた水を2L程度投入していた。冬場は月に一回程度の2L通水のみである。

 

こんな簡易な世話ではあったが、1年以上が経過した2020年4月18日にそうさくをおこなったところ、無事すべてのミミズの生存を確認した。

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残念ながら子ミミズの発見には至らず、養殖の成功とは言えなかったが大型ミミズの1年保存という当初の大きな目標を達成することができた。

 

これをもってミミズ飼育実験は新たな段階へ移る。2020年6月以降の報告になると思うが、楽しみに待っていていただきたい。

 

 

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