この記事はフトミミズ飼育のシリーズ記事だ。最初から読まれたい方は、フトミミズ飼育のページから順に読んでいただければありがたい。
ミミズは高温に弱い。35℃には耐えられないと考えてもいいだろう。それならば、真夏でも30℃が避けられる環境を用意すべきである。(と、はじめのころには考えていたのだが、これに関しては外気温35℃での飼育に耐えうる方法は開発済みである。2024年7月以降の記事公開を待たれたい)
また、容易に冬を越すツリミミズ科のシマミミズと違って、自然界ではフトミミズ科のミミズたちの多くは、多くが冬を越せない一年性の生きものなのだそうだ。(※多年生のフトミミズもたくさんいる。秋に冠帯のない幼体で見つかるミミズはそれである。)
土中深く潜るミミズは少し別である。地下の温度はだいたい15℃で一定だと言われてるので冬を越せそうだ。
早春にとれる巨大なノラクラミミズっぽいミミズは、たぶん越冬したものなのだろう。
しかし、表層に棲むミミズであるヒトツモンミミズは、冬を越せないだろう。卵を産み、その卵が越冬する形で命をつなぐのだ。
※追記
これらに根拠を与えてくれる文献を見つけた。概要はこうだ。
・春先に成体のミミズが採集される→複数年生きる
・秋に成体しか採集されない→1年で力尽きる
・秋に幼体や亜成体が採集される→複数年生きる
あまり気にしていなかったが、論理的に考えればこれは当然だと言えるだろう。これならば、ミミズの飼育ステージを小分けにして実験が行える。
・越年するミミズの幼体を春先に採集し、亜成体を目指す
・越年するミミズの亜成体を春先に採集し、成体を目指す
・越年するミミズの亜成体を秋に採集し、成体を目指す
・成体を採集し、繁殖させる
2019年以降は、この4つの内、上の3つの実験にふさわしいミミズが採れしだい、実験していく方針だ。
※追記終わり
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ミミズの飼育箱
ミミズの飼育は、発泡スチロール(発泡ポリスチレン)の箱で行うことにする。
温度の変化に強く、ミミズの長生きに実績があるからだ。
釣りに持っていくミミズを入れる箱として、今年から導入した発泡スチロールの箱が大活躍している。飼育の第一歩はひとまず生きていてもらうことだ。
釣り用ミミズ箱X
2016年初頭から釣り餌のシマミミズもヒトツモンミミズっぽいミミズもフトスジミミズっぽいミミズもノラクラミミズっぽいミミズも、ごちゃ混ぜにこの中に入っている。
もともとは静岡でシラスを買った時にいただいた保温ケースである。中のスペースは12×7×7(cm)くらいの非常に小さな箱である。
定期的に使っていく分には、特に釣りが終わったら移し替えるわけでもなく、この中でミミズは不思議なほど元気である。それなのに、ミミズ箱1号では最初失敗が続く。
ただ一種、ヒトツモンミミズの大きい物(フツウミミズ?)っぽいミミズだけは、1週間使わないとだいたい力尽きてしまう。
シマミミズに関しては、繁殖しているようで、少しずつ使っても減っていかないほどだ。
この箱をひとまず「釣り用ミミズ箱Ⅹ」と名付ける。ここから学ぶことは多そうだ。
飼育容器の紹介
飼育実験にメインで使うのは、ホームセンターで買ってきた釣り用ミミズ箱Ⅹよりも二回りほど大きい、5リットルの3つの発泡スチロールの箱だ。
これでもまだ小さいが、専門が物質系の私としては、小さい容量で多数実験してからうまくいったものをスケールアップしていくのが実験の基本だと思っている。
全て大きさは同じで、名前はそれぞれミミズ箱1号α、ミミズ箱2号α、ミミズ箱3号αとする。
はじめは特に空気穴や排水用の穴を設けずに飼育を行う。必要となった場合には箱の加工を実施するが、その時には名前を適宜変更していこうと思う。
(2017/04/21以降、排水穴と給水穴を設けたミミズ箱2号βを導入したのでそちらも参照されたい。)
ミミズの寝床選び
フトミミズが腐葉土を好むことは知っているが、一口に腐葉土と言っても、実験として使うには色々なものが混ざり過ぎである。なので腐葉土は最終手段として取っておく(※2016年8月より、市販の腐葉土を用いた実験を開始してはいる)として、ミミズの寝床選びは、シマミミズを使ったコンポストの真似事から始める。飼育に関して既に分かっているシマミミズとの違いは、
・フトミミズは生ごみを食べられない。
・シマミミズのエサよりは、より発酵の進んだ植物残渣を好んで食べる
・巣穴を作ってその中を行き来して生活する
これくらいだ。
腐葉土と同様、「ミミズをとってきた場所の土」でかなり長生きすることがわかっているが、この方法はとらない。みなが同じものを再現するのが難しいし、何が原因でうまくいっているのか分からないからだ。
余計な要素はできるだけ省いて実験を行う
※2019年6月追記
ここから下で述べていることはログとして残しているが、うまくいって飼育に役立つ情報と呼べるものは多くない。実験を繰り返してまともにミミズを飼えるようになってきたのは2018年ごろからだ。現在どのような飼育形態をとっているかは、「ミミズ箱5.1号β」以降あたりの情報から読み始めてもキャッチアップできると思うので、時間のない方はそちらから読むことをお勧めする。
----追記終わり
ミミズコンポストのシマミミズは、どんな餌や寝床を好むのか。調べてみると、エサとして「コーヒーの出がらし」、寝床兼エサとして「ココナッツ繊維」を好む事がわかってきた。
フトミミズではなく、シマミミズの飼育や生ごみを食べてもらうミミズコンポストが目的で当サイトに訪問された方もいるだろう。
そちらについては、完璧なマニュアルが本で出ているので、参照されたい。
釣りエサ用のシマミミズ業者がどういう経緯でシマミミズを養殖し釣りエサとして販売するようになったか。これらをご存じだろうか。そこを簡単に紹介していく。
釣りエサ用のシマミミズは、主に二種類のメーカーの子会社が養殖、販売している。以下に、それぞれ示す。
①繊維メーカーで処理に困っていた、繊維が短くて製品にならない「コットンリンター」と呼ばれる綿花の繊維の短い物を食べさせ養殖する
②再生紙製造メーカーで処理に困っていた、繊維が短くて紙にならない「ペーパースラッジ」と呼ばれるパルプのかすを食べさせ養殖する
いずれも製品を作るときの副産物で養殖し、釣り餌を販売している事がわかる。釣りエサのミミズで有名な「りんたろう」は、コットンリンターから名づけられているのだと思う。
共通する点は、「コットンリンター」「ペーパースラッジ」は両方、繊維の短いセルロースのカスであることだ。
続いて、シマミミズを使ったコンポストの寝床としてシマミミズ専門の業者が存在し、そこから販売されている専用のミミズの寝床(ココナッツ種子の殻の繊維を粉砕したもの100%)というものが存在する事を知った。市販のパームビートでも代用できるかもしれない。
まずはこれらのものを寝床として、フトミミズが長期飼育可能かどうかを、3つのミミズ箱で調べることにした。
1号αではコーヒーの出がらし、2号αでは短くなったセルロース繊維のカス、3号αは専用のシマミミズの寝床でスタートした。ただし、ミミズは食べた物を粉砕するための砂を蓄える「砂のう」という器官を持っているので、特にそれぞれで言及はしないが、私は少量の砂を寝床に混ぜて実験に臨んでいる。
それぞれの飼育方法でスタートしたはいいが、実験はそううまくいかないものである。
「コーヒーの出がらし」、「ココナッツ繊維」だけを使用した飼育実験は早々に失敗に終わった。
その後随時、各飼育箱での飼育方法は変わっていっているので、各飼育箱の情報はこれらに留まらない。
それぞれの飼育箱ページには日付順に情報が載っているので、照らし合わせながら眺めてみてほしい。
2017年5月以降2018年までの実験について
2016年からの飼育実験結果を踏まえて2017年5月以降はミミズ飼育床土は私が開発した「NPS2.0-F」というもので統一し、ミミズの種類や条件を変えてミミズ飼育実験を行っている。過密飼育を避ければ半年以上はミミズが元気に生きる良い床土だ。作り方はミミズ箱1号αのページにて解説しているので参照してほしい。(「NPS2.0-F」による飼育は2018年で終了した)
2019年以降の実験について
2019年初頭からは、上記の紙をベースにした「ニセペーパースラッジ(NPS)」系の床土を卒業し、FK3.0という新しい床土の開発に移った。この床土は、コストがかかる以外は基本的にミミズを飼育する(繁殖ではない)ためのものとして性能では申し分ないものになったと考えている。これに使うのはミミズ箱5号βであるが、飼育方法が大きく舵を切るので「ミミズ箱5.1号β」としてあたらしくページを作成して実験の経過を書いていこうと思う。
2023年以降の実験について
コロナやなんやで数年にわたって実験が滞ってしまった。当サイトは釣りサイトなので、2023年からいったん釣り用フトミミズの最大の課題である「夏の屋外でのミミズ保存」に焦点を絞った飼育方法で実験を行ったので、2024年はその結果を随時記事にしていくつもりである。この実験は「ミミズ箱6号γ」で行い、いい結果が得られている。この実験の考え方や手法についてはnoteでまとめていくので参照していただきたい。